2010~2011年、晩秋から初冬にかけてのパリ。
朝の停滞した冷気を感じながら街を歩いていた。
澄んだ青空には、くっきり白い線が…そう、飛行機雲だ。
パリの空には、いつも飛行機雲が浮かんでいるイメージがある。
出来立てほやほやの飛行機雲、滲んで消えそうな飛行機雲を見ながら、ふと、その光景が写真を撮った
あとの行為と重なる。
感動的な光景を忘れないよう心のままにシャッターを切り、写真に残す。
しかし、鮮明だった光景は時間とともに記憶から消えゆく…まるで飛行機雲のように。
うすれゆくその様を、写真という記録で補う…だが、そのズレは埋まらない。
ズレは日増しに拡大し、ただ他愛もない写真だけが残っていく。
わずかな事で一瞬でも喜びを感じる事が出来た事が、唯一の救いかもしれない。
だが、私の仕事はそれでは終わらせられない。
残された記録の塊をどうするか…。
まず、見せる事…それは私の仕事の一つでもある。
見せる事で、残された他愛もない記録が、新たな感動を生むかもしれない。
そんな妄想が、この写真展を行うキッカケになりました。